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【blog】高橋雅子の万有色彩「光琳の櫛」

高橋雅子の万有色彩『光琳の櫛』

 

人生のとあるタイミングで

人生を変えるほどの本に出会う、

ということがおきます。

それはほとんど恋に落ちるように

突然の出来事ですが、

その本を手に取った感触まで

明確に思い出せるほどです。

 

最初の出会いは20歳の時の

芝木好子「光琳の櫛」でした。

横浜ルミネにある有隣堂書店で

200ページくらいの薄い文庫本を

どうして手に取ろうと思ったのか。

私は尾形光琳の名前も知らず、

櫛になど興味も持ったことのない、

短大の英文科を卒業したばかりの

証券会社に腰掛け気分でおつとめするOLでした。

 

でもその本を手にする時に、

私にはわかっていました。

この本の中に

”私が知りたいこと”が書かれていることを。

その頃の私は、

自分が何を知りたいのかすら

わかっていませんでしたが、

でも、確実に

その本とその本の向こうに広がる世界に

私が求めているものがあることだけは

わかったのです。

 

その日から私の中に

この世のありとあらゆる美しいものへの

興味と憧憬が拓かれていきました。

櫛や簪、着物、洋画、日本画、ガラス工芸、

そして染色。

それはその後私が飛び込んでいった

色の世界への扉が開いた瞬間でもありました。

 

あの出会いから30年以上の年月が経過し

まだまだ自分自身が学びの途中ですが、

そろそろいい歳にもなってきましたので、

色彩に関心がありながらも何を学べばいいのかわからない、

自分が色彩に興味を持っているのかすら気づいていない、

というあの頃の私のような若い女性たちに、

もちろん比ぶべくもありませんが、

今度は私が「光琳の櫛」の役目ができたらいいなと

思う今日この頃です。

 

(写真は祖母の形見の花嫁衣装の櫛です)

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